自筆証書遺言は、他の方式と異なり、遺言者のみで作成できる簡易な方式であるという利便性があります。
他方で、自筆証書遺言は、自宅で保管されることが多く、遺言書の紛失・破棄・隠匿・改ざん等により、相続をめぐる紛争が生じるおそれがあります。
そこで、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律73号)が成立し、法務局において自筆証書遺言に係る遺言書を保管する制度が新たに設けられました。

同制度を利用することにより、国が指定した法務局において、1件につき3900円の手数料を支払うことで、法務局に遺言書を保管することができます。
また、遺言の検認(民法1004条1項)が不要であるため、遺言の執行を比較的スムーズに行うことができます。
信託銀行など民間の遺言書保管サービスを利用すると、数万円の基本手数料に加え、年間単位で別途保管料が掛かる場合が多く、それらと比較すると、法務局の遺言書保管制度は、安価な手数料で大事な遺言を安全な場所に保管することができる便利な制度です。
もっとも、法務局の遺言書保管制度を利用することで、遺言をめぐるトラブルを必ず防げるわけではありません。
保管する遺言書が自筆証書遺言である以上、遺言書の記載内容の不備や、作成段階での偽造等を利害関係者から疑われるなどして、後日トラブルに発展する可能性があります。
大事な財産そして想いを次の世代に繋ぎ、親族間でのトラブルを避けるためには、弁護士等の助言を受け、より確実な方法・内容の遺言書を作成すべきです。
遺言書の作成等、相続に関するお悩みについて、お気軽にご相談ください。